彼女は、深夜25時頃に、突然酔っぱらってやってきた。
来ることは事前にLINEで分かっていたが、玄関前に来るやいなや、
「ほら、襲わないなら、襲うぞー」
びっくりして飛び起き、仕方なく家にいれてあげた。
これが失敗だった。
「襲うのは無理だよ。しかも、だいぶ酔っているようだし、ベッドを貸してあげるから寝たら?」
と諭してあげた。
これが余計な一言だったらしい。
逆効果だった。
むくっと頭をあげて、唸り声をあげた。
「うぉおおおおおお、ごぉおおおおおおおおお」
カバンからサーモンメタルバットを取り出して振りかざしてきた。
「ちぇすとぉおおおおおおお」
反復横跳びが得意だった私は、運良く横飛して交わすことができた。
年中だしっぱなしのこたつを叩き折り、
それを見て、ふと鏡開きを思い出した。
「ぎぃいいいいいいいいい」
外したことがよほど悔しかったのだろう、
右手の親指で私の眼球を狙いに来た。
運良くか悪くか私の口の中に飛び込んできた。
「あああああ、ああぎゃあががああがああああっががああああ!!!」
彼女が全身全霊で絶叫したと同時に指が噛み切られた。
彼女は、よほど痛かったのだろう。その場でのたうち回っていた。
私はそれを見て、ふと船上にあげられた鮭を思い出した。
口の中には親指がはいっており、つけ爪がやけに嫌ーな感じだった。
しばらくすると
「ぁがーぁがー」と小さく唸りだし、
夜の中野へと消えていった。