2016-04-13

無音の人


昨日急にラーメン食べたくなり通りすがりラーメン屋に入ってみた。

店に入ると、

「お一人様ですか?カウンターへどうぞ。」

え、まじか、テーブルの方がいいんだけど・・・

そこは選ばせないで強制するパテーンか。

あいい、うまけりゃいいんだから

隣には先客の男がいて、醤油ラーメンぽいのを注文していた。

俺も無難醤油ラーメンを注文する。

隣の男が食べ始めたがなんかおかしい。

無音だ。

麺を持ち上げ、口を尖らせる。

麺を冷まそうとしているように見えるが、

ふうー ふうー

という音がしない。

おそらく口からは音は出ていないが微風が出ているんだろう。

じゃないとあの行程は不要だ。

しかしまあ、麺を持ち上げてから結構時間そのままだ。

そして、いよいよ口へラーメンを…

箸にすくった麺を上からセンチぱくり。

そこから口の中へゆっくり手繰り寄せるように麺を移動させる。

無音で。

あ、これがこの店の流儀なのだろうか。

だが張り紙も注意書もない。

ほどなくして、俺にもラーメンが来る。

はいつもと同じように麺を持ち上げ、ずずっとすすった。

うまい

店長らしき人も注意してこない。

良かった、あれはきっと彼特有の食べ方なんだ。

その間も、彼はさっきと同じように麺を食べている。

隣に人がいるのを忘れるくらい無音で食べている。

彼は一旦箸を置いた。

無音で。

箸くらい置くとき音がしそうなんだが徹底してるな。

麺を食べ終わったらしく、スープを飲むためにドンブリを両手で持ち、ずずっと…

飲むかと思いきや、無音で飲んだ。

本当に飲んでいるのだろうか。

彼は呼吸器系が弱くておもいっきり吹くことが出来ない。

胃がなくて一気に食べると血糖上がっちゃって大変なんだ。

食道に潰瘍があってしみるんだ。

きっとそうなんだ。

彼が先に会計を済ませて店を出て行った。

ラーメンはこれまで食べてきたラーメンでも一位か二位かの美味しさだった。

うまさで少し泣きそうになってしまっていた。

店を出ると彼が車の横でタバコを吸っていた。

その後言った。

「あ~~~~~~~~~~~~、うまかった~~~~~~~~~~~」

思ったより低い声だった。

彼の眼には大量の涙が溢れていた。

  • よくわからないけどイラッとした 多分ひとりのくせにテーブルがいいとかいう傲慢なことが書かれているから

  • 無音で幽霊だったってこと? 取っ掛かりも引っかかりもなく、何かが込められてるようには見えなかった。 つげ版の無能の人っぽくもなかったし、映画版はしらんけど。 正直伝わって...

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