何回も学会に出席していると、周りも知ってる顔が多くなってきて、参加者の所属とかどんな研究やってるのかとかが分かるようになってくる。そんな中でただ一人だけ、いつも学会で見かけるんだけど何やってるのかさっぱり分からない人がいる。
ネームプレートを見ると、A大学(仮称)で学生をやっているようだが、学生にしては顔が老けてるし、A大学の先生に聞いても「あんな人知らない」と言う。彼は、自分が講演したりポスター発表したりする様子は一切なく、いつも他人の発表を聞くだけのために会場にいる。時々、講演を終えた教授などに話しかけて、実験条件などをかなり執拗に聞き出そうとするので、学会参加者からは結構ウザがられている。
このように専門的な質問をぶつけていることから、単に会場に紛れ込んでる一般人じゃないことは明らかだ。とにかく素性がよく分からないので、みんな不気味に思ってなるべく近づかないようにしているが、毎回、決して安くない参加費を払って会場にいるのだから、やはり何らかの理由があってそこにいるのだろう。
彼は一体何者なのか。どこかの組織から派遣されてきた産業スパイじゃないかと言う人もいる。だが、社会からほとんど注目もされてない小さな科学者コミュニティにスパイを送り込む理由など無いはずなので、さすがにそれはないだろうと思う。
社会人になってから、大学院に入りなおして、博士号を取るパターンなんじゃないの。