比較的空いている時間帯のこと。郊外に向かう電車に乗っていたら女子大生二人組が乗り込んできた。
どちらもなかなかに可愛らしくわたしは思わずすかした態度に改まった。
そんなわたしの目の前に立ち、彼女らは会話を始めた。
「そっちはまだいいよね。近くに大きなモールもあるし」
「そんなことないよ。モールなんて郊外ですって言ってるようなものだよ」
「郊外ならいいよ。うちのところなんて田んぼだよ。畑じゃないよ?田んぼだよ田んぼ。」
この女子大生、話しているうちに「ぼ」という響きが気に入ってしまったらしくその後も幾度と無く繰り返していた。
「田んぼって、大体響きからいって田舎臭いよね。田んぼ。そもそもぼって何?ぼって。さすがにぼはない。ぼ。」
そのギャップもあってか、すかした態度のわたしとは裏腹に周囲はじつに微笑ましい雰囲気に包まれた。
必死で笑うのをこらえようとするわたし。
真っ先に悲鳴を上げたのは、わたしの括約筋だった。