なかなか心を開かないし来客に吠えまくるし困った子だった。
それでも年に数回しか会わない自分には吠えないし、やたらお父さんには服従してた。
犬らしい犬だった。
この子は、もう二度と犬を飼いたくないなくすと悲しいからとかたくなだった母から許可を得て父が飼い出した犬だった。
田舎ゆえ、昔は犬ならどこかしらからツテでもらうものだったが近年そういったことはしなくなっていた。
飼い主がいいかげんだった避妊や首輪での管理を見直し徹底したためだと思われる。うちもだ。
なのでペットショップのツテから巡ってきた子犬をもらったのが、この犬だった。
うちではそれまでに累計3匹犬を飼っていた。
いい加減な放し飼いとかいい加減な散歩とか、田舎あるあるできっかけがあったため前々任の犬が産んだ。
それが前任だ。
前任の犬はひたすらおとなしく甘えん坊で利口だった。
コリーと混ざりまくった雑種、という感じがたまらなく愛嬌のある顔で美人だった。
母はその前任と長い時間を共に過ごしていた。
あぁあの前任の犬のほうがいいといった内容をこぼしていた。
親元を離れて犬のことに干渉のない自分にはとくにフォローのしようがなかった。
それでも母は、当然のように世話をし散歩をしエサをやり。寒い日には毛布をくるっとして防寒力の高そうななにかを作って犬小屋にいれていた。
そして昨日母から「犬が死んだ」と全く別件のメールの返信で来た。
たった一言だったしそれ以上聞かなかったけど。
また母は大切なものを失った悲しみに暮れていることは分かった。