もう7年位前になる、当時はガールズバーって単語はなかったが女の子とお喋り出来るバーだったのでガールズバーと言った方が今語るにはしっくりくると思う。
そこには社会人になりたての僕と職場の先輩の二人で行った、駅の近くの雑居ビルの2階だったか3階だったかにそのバーはあった。
僕はその頃まで女の子と親しく話した事はあまりなく、またそのバーでも上手く話せなかった。
そこではカラオケを歌う事が出来た、他の人は演歌等の渋い歌を歌っていた、僕はその中でBUMP OF CHICHIKENを歌った、
特別好きとまではいかないけど、僕の少ないレパートリーの中では比較的マシに歌えるバンドの歌だった、
ただあまり上手に歌えなかった、普段カラオケにいかないってのもあるが、人前で歌うってのに慣れていなかった。
歌い終わった後、ガールがBUMP OF CHIKENについて話題を振ってきた、彼女の話はチームの歴史や歌手の歌い方等、これがほんとのBUMPファンだと思わせる博識っぷりだった、
当然僕にそんな知識があるわけでもなく、会話はすぐに終わった。
エレベーターで帰る時にガールが見送ってくれた、そのガールは会話したガールとは別の人だったが、僕はその時河川敷をダッシュしたいような衝動に駆られていた。
上手く歌えなかったこと、BUMPのにわか好きを自覚した事、そして会話が弾まなかったこと、
僕はそれをエレベーターのドアが閉まった時に大声で歌う事で発散した、
エレベーターの中で1階に着くまでの一人の空間、その中で発散し、ドアが開いたらまた僕は普通の僕に戻るのだ。
ドアが開いた、そこには見送ってくれたはずのガールが目を丸くして立っていた、
エレベーターは動いてなかった、1階を押し忘れていたのだ、
僕は歌うのをやめ、無言で1階を押した。