だがそれは、単に国技と呼ばれる競技の最高位に、日本人がいないという現状を寂しく思う気持ちから生じた欲求であって、白鵬に反感があるからではない。
終盤戦などに、白鵬の対戦相手に声援が飛ぶこともあるが、これは日本人特有の判官贔屓と、優勝争いが面白い展開になって欲しいという気持ちからだろう。遠藤と対戦した際の遠藤コールも、気鋭の若者を応援してやりたいという親心みたいなもので、白鵬を敵視してのことではないはずだ。
舌禍事件の引き金となった春場所の対稀勢の里戦は、白鵬の足の甲が先に返っていたように見える。一昔前なら、むしろ稀勢の里に軍配が上がったような気がする。「相撲で勝って勝負に負ける」ってやつだ。これが同体取り直しになったので、白鵬は命拾いをしたなと思いながら見ていたのだ。そしたらあの騒動だ。
そして今場所の豪栄道戦。今回も相撲では白鵬が勝っていたが、明らかに白鵬の肘が先に落ちた。行司さんはよく見ていた。しかし、取組後の彼の様子を見ていると、また稀勢の里戦の時のような被害者意識に捕らわれているのではないかと心配になってくる。
日本には判官贔屓という文化があって、そして勝負の判定については杓子定規なところがある。その辺のところが、どうも上手く伝わっていないのではないかなぁ。
あれだけの成績を残した功労者だから、彼が現役生活を終えるときに、日本を誤解したままだったり、寂しい気持ちを抱えていたりしないようにしてもらいたいな。