その集落では、豊かとは言えないまでも勤勉に暮らせば、喰うに困る事はなかった。今までのところは。
その集落では、しきたりの遵守、年長者への配慮、構成員とのさまざまな調整は必要だけれども、うまく役割を分担し、全体としては効率よく運営できていた。今までのところは。
ただ集落は少しづつ高齢化し子供の数が減ってきた事で、役割の分担に支障が出てきた。ほんの少しづつだけど確実に。
集落の生業は一つしかないが、その生業自体が陳腐化することで、相対的に富を産まなくなってきた。
集落の維持は必要であり、その生業自体も社会には必要なことだけど、集落の構成員全員を養え無くなりつつあった。
それでも集落には蓄えがあるので、切り詰めて頑張れば暫くは喰うに困る事はない。
その生業自体は過不足無くこなせるが、もっと他に社会に貢献し富を得る方法もあるかもしれない、そう考える事もある。
そんな折、隣の集落で話を聞く機会があった。
その若い集落は、構成員の人数がとても少なく貧しかったが、新しい商売を思いついたらしく、規模は小さいけれど、急速に成長している分野でもあるので、人出が足りず、当然忙しかった。
経験豊かな構成員が増えればきっと、その商売も成長できる筈なのだけれど、今は貧しい事もありなかなかうまくいっていなかった。
あなたは心動かされるものがあり、できればこの集落に移り住んで手伝いたいと思った。
でも集落を移ることは、数十年前に比べればだいぶマシになったとはいえ、やはり世間の風当たりや様々な不安やデメリットもあった。
なにより少し貧しくなる事を覚悟しないといけない。
あなたはどうするべきだろうか。