高校のとき、駅前で制服でタバコを吸っていたら、父親くらいの男が寄ってきて、
「高校生のくせにタバコなんか吸うんじゃない」と説教してきた。うざいのでシカト
してたら、「人は些細なことから道を踏み外していくんだぞ」と言う。今とは違い、
当時、人前で、しかも制服でタバコを吸ってる奴はほとんどいなくて、実際、俺も
ちょっと道を外し掛けていた。
「うるせーな、ほっとけよ」と言うと、とつぜん、その男が俺のタバコを取り上げて
自分で吸い始めた。「何すんだよ」と言おうとしたら、「そうか。お袋さんも元気か」
などと陽気に話始めた。その直後、俺の死角だった路地からパトロール中の
警官が2人出てきた。
「ここは禁煙ですよ」と注意されると、その男は、「あ、すみません」と言って
タバコを捨て、踏み消した。「こんなところに捨てないでください」とまた叱られると、
ポケットからティッシュを出して、吸い殻を包み、「じゃあ、またな」と俺に言って
どこかへ行ってしまった。去ってゆく背中が咳き込んでいた。普段はタバコなんて
吸わない男なんだろう。
それからも別に素行や生活に変わりはなかったが、道は踏み外さずに、何とか
社会人になれた。
偉大なる先増田様