2021-02-28

男性的魅力をガン無視してたらモンスターが錬成された

 別れた彼氏の話。

 ひとつ年上の、穏やかで、繊細で、優しい人だった。料理趣味で、旬の素材を使った和食とかお菓子とか、そういうのを作った話を楽しげにしてくれる人だった。綺麗な月だよ、なんて言って写真を送ってくれるような人だった。そういうところが好ましくて、付き合った。

 付き合ってから、彼になんとなく変わったところがあった。同僚に彼女がいないことをこきおろしたり、割り勘派の私がレジで財布を開くのを嫌がり、「大きいのしかないから俺が払う、後で請求する」と言って店の外で半額回収するシステム採用し始めたり。まあ些細な変化だ、と私はそれらを気にしないことにしていた。

 彼はもっと変わり始めた。駅とか公共の場で俺が好き?って聞いてきたり、会って早々ホテルいかない?って言ったり、俺と前の彼氏どっちがいい?って聞いてきたり、ホテルアフタヌーンティー行くのにバンドコンサートグッズのTシャツ着てきて、俺こういうところに服合わせてらんないんだよね〜って言ったり。その頃にはもう私の好きな、穏やかで、繊細な彼はいなかった。変な男がいるだけだった。

 別れたいと言った時、彼はショックを受けていた。彼曰く、私がそういうのが好きだと思って、無理してキャラ変したらしい。私がそんなのいつ好きだって言った?って聞いたら、言ってないけど、男らしくしてた方が喜ばれると思って、と言った。私が彼の家庭的なところ、優しいところを褒めるたびに当て擦りをされている気分だったとも言った。

 彼は本当は、料理上手で感性が豊かなところより、年上らしく頼り甲斐があるとか、男らしいとか、そういうことで褒めて欲しかったらしい。だけど私は彼と身長も同じくらいで収入トントン学歴も同じくらいだからそういうので褒めるべきポイントがなかった。なのでその辺を特に褒めずにいたら、結局彼は自家中毒を起こしてしまった。

 悲しかったけど、これはもう巡り合わせの問題だと思った。次を探すしかない。だけど、もし次に付き合う人がいたら、例えばペットボトルの蓋は相手ににあけてもらおう思った。そういうのを女が男にやってもらうのって大嫌いで、男女関係なくあけられる人があければいいと思っていたけど、男らしさモンスターになってしまった元彼が、「俺があけられなかったペットボトルの蓋を君が代わりにあけた時に、本当に嫌だった」と言っていたので。

  • 自家中毒という言葉をこんなにうまく使っている文章を読んだのは初めてのような気がします。好きです。

  • 怪力で笑っちゃった

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