2017-01-21

情報活用能力調査について

先日、高校生情報活用能力調査についての結果が発表された。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1381046.htm

その結果について、「高校生表計算ソフト苦手 情報活用調査 正答16%どまり」と見出しを付けて報じた記事がある。

記事の本文では「表計算ソフトを正しく使えるかをみる問題の正答率は16.3%。」と書かれていることから文部科学省報告書の32ページの表にある「不正請求」の「S25-02」の問題を指していることがわかる。この問題は「数年間の認知件数1件当たりの平均被害額を,表計算ソフトを用いて計算することができる。」かどうかを調査する問題である

この問題は、結果概要にも報告書の94ページにも公開されていて、単に表計算ソフトの使い方を調査しているものではないことがわかる。「2008 年から 2012 年まで の認知件数 1 件当たりの平均被害額を求める」ために、正しい計算式を考え、その式を表計算ソフト入力して求めるという一連の処理ができるかどうかを調査する問題である。単に平均を求める関数を使えるかどうかという問題ではない。

この問題について、文部科学省の結果概要では「5年間の認知件数1件当たりの平均被害額を,表計算ソフトを用いて計算する問題」と書いている。しかし、問題本質をとらえず「表計算ソフトを正しく使えるかをみる問題」としてしまっている。ミスリードだ。

高校情報科では、「文書作成プレゼンテーション表計算指導する教科」との誤った認識のまま授業が実施されている現状がある。(リンク先の35ページ(PDFファイルの5ページ目)参照)

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0ahUKEwjpiv-BitHRAhUME7wKHdxMDLQQFggaMAA&url=https%3A%2F%2Fipsj.ixsq.nii.ac.jp%2Fej%2Findex.php%3Faction%3Dpages_view_main%26active_action%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D144709%26item_no%3D1%26attribute_id%3D1%26file_no%3D1%26page_id%3D13%26block_id%3D8&usg=AFQjCNGk_y9QJn8Oq9xY2nFwrhWWwnZUgg&sig2=KsKirJMrLkfAbZqaTD_UWA

この誤った認識助長する見出しになってしまっている。記事見出しだけを見た人が、「表計算ソフト指導を強化しなければならない」と短絡的に考えることにつながり、オフィスソフト操作に終始している高校情報科の現状を認めることになってしまう。その結果として、報告書の76ページから77ページにかけて書かれているように、情報科を履修した生徒とまだ履修していない生徒との差が生じないのではないか。言い換えると、情報活用能力を育成できていない情報科の授業を認めてしまうのではないか。その観点からも、この記事問題である

このような記事掲載してしまうのは、情報活用能力について理解していると考えられない。また、高校生情報活用能力調査の結果として「複数情報がある多階層ウェブページから目的に応じて特定情報を見つけ出し,関連付けることに課題がある」という指摘が、新聞記者になっても身についていないと言わざるをえない。

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