2016-04-16

カラオケ衰亡

2037年、音痴障害であることが社会一般化した。音痴という言葉差別的表現であるとされ、音声障害者呼称されるようになった。

また音痴の人を影で笑うことは、四肢が欠落している人、目が見えない人を嘲笑することと同じように、差別的な振る舞いとされた。

音痴矯正するリハビリ発声練習には保険が付き、程度の差こそあれ安価音痴が治る時代になった。リズム音痴・音声音痴はそれぞれ音声障害A型・B型と定められ、病状に応じたリハビリが行なわれた。

コミュニケーションツールとして数十年の歴史のあるカラオケ業界は、岐路に立たされることになった。

カラオケに行けば必ずや数人の音痴が現れる。音痴障害になったことでカラオケから人が遠のいた。

カラオケ業界対応策として、高性能のキー同調機能カラオケ付与した。

カラオケで発せられるべき正しい音声に、自然矯正して音が響くようにしたのだ。

この技術はそもそもテレビ業界が、歌の決してうまくないアイドル歌手に対して施していた技術だ。

これがカラオケでも流用され、一般人も正しい音声で歌が聞こえるようになった。

この善後策によりカラオケボックスには一瞬だけ人が入ったが、すぐにまた誰もカラオケに行かなくなった。

誰が何を歌おうと同じだからだ。

こうして、旧石器時代から続いていた営みである歌舞文化、歌って踊って楽しむ文化は打ち捨てられた。

2106年の現在、音声障害法の制定が、カラオケ文化の衰退を生んだとされているが、これは語ってきたとおり正確ではない。

正しくは、カラオケ業界キー同調機能カラオケに付加したからこそ、カラオケ存在意義がなくなったのだ。

行きすぎた個性希薄化は文化衰亡を呼ぶのだ。

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