初めて人を好きになったのは、中学1年で出会った転校生の女の子だった。その子とは3年間付き合って別々の高校に進学して疎遠になり別れた。
今年の夏に職場の野郎ばかりの受付に新規採用の女の子が入ってきた。僕よりひとつ年上の人だった。
彼女は、人当たりもよく、自分のことを顧みず猫を助けるような優しい心の持ち主だった。
仕事面でも教えられたことをすべてメモし、吸収していく能力がすごく高く、ひと月も経たずに大体のことを一人でこなせるようになった。
そんな彼女を横で見ているのがすごく嬉しかったし、反面自分の手を離れていくような気がして少し寂しくも感る時もあった。
彼女に出会う前は、仕事中に私語なんて以ての外だと思っていたし、それが正しいと思っていた。
今では、業務なんかさっさと片付けて他愛もない話をしているのが楽しかった。彼女と一緒のシフトの日が楽しみになってさえいた。
それから3ヶ月、お互いの身の上話をするようになってから、近いうちに地元に帰るという話を聞いた。
元々同棲している彼氏がいるのは聞いていたし、その時はあまり深く考えていなかった。
でも改めて思うと、あの笑顔を見れなくなるって考えるだけですごく辛い。涙が止まらない。
気づいたら自分の中ですごく大切な存在になっていた。自分は彼氏でも、ましてや親しい友人でもない、ただの同僚なのにだ。
すごく気持ち悪い奴だと自分でも思う。童貞ではないけど、何かをこじらせているという自覚もある。
きっと彼女が自分に合わせてくれているだけで実際にはどう思われているのかも分からない。
中学でセックスしたことあるという最強の経験を持ってるじゃないか。 その経験のないモテ夫が5千人束になってもかなわない最強の経験を。