これまで金銭的なことで不自由を感じたことはないし、スマホも中学から持たせてもらってた。
住処だって二階建ての一軒家でそれぞれに部屋があり、学生の時分には勉強に集中しなさいとのことでそれなりの小遣いも貰っている。
一般的に見て、裕福な家庭だと思う。もちろん小言を言い合ったりはするものの本気で喧嘩をすることは少ない。
今朝のことだ。いつもと変わらない朝だった。俺は寝ぼけ眼でダイニングの椅子に座り、隣では妹が欠伸をしている。
テーブルには既に朝食が並んでいて、ご飯に味噌汁、それにウインナーと卵焼き。
全員が座っていただきます、と声をかけ、そのあとすぐのことだった。俺が味噌汁を啜る前。
「父さんな、開示請求されたんだ」
いつも通りのワイシャツ姿で、親父がいきなりそう言った。
全員が手の動きを止めていた。
俺はは?って思った。何言ってんだ?となり、それから少しずつ目が覚めていくように親父の言葉の意味を理解すると「は?」と口に出していた。
どういうこと…?隣で妹が親父に声をかける。
親父は俯き、箸を置いて「開示請求されたんだ…」と苦々しく語った。
いや意味わかんねぇよと俺が言うと親父は「すまない…」とだけ言った。
それだけで十分だった。
母は箸を置いてそのまま出ていき、暫く帰ってこなかった。
妹は動揺して何も口にせず、俺も喉に何か通る気がしなかった。
「本当にすまない…」と親父は俯いたまま繰り返した。
炎上した有名人の話を耳にして、酸っぱいものがこみ上げてきそうになる。
確かに親父は悪いことをしたのかもしれない。だがただの一般人なんだ。
今回だけはどうか、見逃してほしい…。
へぇ、そらまぁ、ほんまに裕福なお家なんどすなぁ。普通は中学からスマホなんて持たせてもらえへんし、二階建ての一軒家にそれぞれの部屋持てるのもなかなかないこっちゃね。それ...
戦え