彼は表では多様化する社会を容認し、幅広い価値観を受け入れられる社会を目指そうと謳う。
裏では、氏は処女を好む。
店に新しい子が入り、処女だと分かると氏に連絡がいくようになっているのだ。
一部の男性の間では未だに処女信仰のようなものを掲げる者たちが居るが、正直私には理解が及ばない。
一度、M氏にも尋ねたことがあった。
「私は多様性を心から認めるし、認めるようにもしている。ただ女性は処女のほうがいい。これは癖のようなものなのだから、仕方ないよ」
氏は快活さを思わせるような笑みを作って、いつものように答えた。
そして世界的に有名な宗教の名前を挙げ、処女が高貴なものであることを歴史として語った。
それでも腑に落ちなかった。
M氏にも。その宗教にも。
処女だけを認めて、他を認めないというのはどうなのか。
神の名のもとにあるものが、そんな狭量でいいはずがない。
神は差別主義者なのかもしれない。
差別を行い、選別をして生死の区分けを行うのは蛮族のやることだ。
神は蛮族なのかもしれない。
純粋な蛮族なのかもしれない。
M氏は人当たりの良い微笑を浮かべる。
彼を嫌う人間は少ない。
それでも私は彼のことを何処か、蛮族として見ているのかもしれない。