2022-05-04

帰省、呪われた風呂、恐怖の叫び

帰省した。

郷里は2時間サスペンスドラマ被害者加害者実家とかでよく登場するような中途半端田舎である


夜も更けて、風呂に入ろうとしていたら、老母が神妙な顔で言うのである

「入浴の際には、脱衣所のドアを、完全に閉めなければならぬ…さもなくば、恐ろしい目に遭うだろう」


そんな因習あったっけ、と思いつつ、風呂に向かう私。


「…もし、…もし、ドアを閉めることを忘れたならば、タオルラックの左側を使うことじゃな…くれぐれも、気をつけよ」そんな忠告が背後から聞こえた。


入浴。


やはり実家風呂は広くていい。

いーい湯だな。とご機嫌で湯に浸かり、身体を洗っていると、私は自らのミスに気づいた。


脱衣所のドア、完全に閉めたっけ?

…まあいっか。


風呂から出てラックからタオルを取る。


左…左…

極度の近視のため、ぼやけまくり裸眼のまま手探りでラックに手を伸ば…


「ギャァァアア」私は思わず叫び声を上げた。

手には、タオルとは異なる、生暖かく、濡れた皮膚にまとわりつく感触…そう、毛皮のような…




「だから、脱衣所閉めろって言ったでしょ。」

老母はタオルラックから回収した毛皮を撫でながら言う。


「ニャア」


「いや待って、ちゃんと左から取ったよ」


「あれ、いつもは右側にいるんだけど」


「ニャアッ」

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