2021-12-15

海を目指して歩く

海を目指して歩く。

工業地帯バイパスには、大量のトラックが行き交っている。耳をつんざく騒音と煙たい排ガス

ただでさえ乾燥でガサつく喉が刺激され、ヒリヒリとした痛みが襲う。

我慢限界を迎え、国道を外れ小さな道に入る。

巨大な団地の入口

もう全体の半分も出ていない洗濯物を眺める。ときどきすれ違う住人の腰も曲がっている。

海を目指して歩く。

団地の中で、名も知らぬ高校の脇を通る。声は聞こえない。

ただ、校庭では淡々バスケットボールの授業。シュート練習をしている者。暇して、隅っこでおしくらまんじゅうしている者たち。

わけもなく視線を送りながら歩いていたら、足元の小さな段差に転びかけた。

周りに誰もいないのを確認し、何事もなかったかのように再び歩き出す。

視界が開けだす。

あれは海か?

足に疲れはない。お昼時をまるまる潰して歩いてきたのに、振り返ればスタートした地点が見えるような、ふしぎな時間感覚がある。

海岸目線から低くなっていく。

白砂青松

砂浜に足跡をつける。もう十数メートル先に広がっている。

黒く、くすんだ、墨汁を延々と流し続けられているような、冷たい冬の海。

腕を挙げ、全身を海風さらす。冷たい風がダウンコートをすりぬける。

ふと、この風はどこからきているのだろうか、そんな考えがよぎる。

よぎって、消えてゆく。

はるか海の向こう側にどこかの街が見えた。

この狭い内海には、なにもなかった。

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