夢にたびたび奇妙な家が出てくる。
全面ガラス張りで、三角形の屋根をしていて、グレーの絨毯が敷いてあり、あちこちに数十個の白いギターが置いてある。なぜか天気は決まってくもりで、日当たりのよくないところに建てられているのか、いつも薄暗い。
そこに住んでいるのは、自分が好きなバンドのボーカルである。もちろん現実の彼はアパートかマンションかに住んでいると思うが、実際そういう家に住んでいてもおかしくないような浮世離れした雰囲気の人である。夢に出てくる白いギターも、彼の愛用ギターである。だがあんなにたくさんは持っていないだろう。
夢でその家に行くと、いつも自分とボーカルの彼は追いかけっこする。ボーカルの彼は一言も声を発さず、無表情で、早足で自分を追いかける。自分も何も言わず、無数のギターをすり抜けて早歩きで逃げる。恐怖や焦燥などは感じない。ただ淡々といつも逃げている。自分はいつも、途中で転んでしまう。距離を詰めてくるボーカルの彼の気配を感じたところで、夢は終わる。