2020-07-16

あたらしい長者どんのお話

むかしむかし。ある村で、重税で首を括るものが頻発しておったそうな。

その村の、長者どんの息子どんは、その噂をいつの間にかに聞きつけて、いつも首を括る村人の最後個人的自主的に立ち会っていたそうな。

今にも首を括ろうとしている村の衆を、膝を抱えてじっと見ていたそうな。

重度のうつから若干の改善が見られる頃にもっとも多くの患者が首を括るから、多くのものは、長者どんの息子どんが眺めていることを知っていても、頓着せずにぶら下がったそうな。

あるとき、今まさに首を括ろうと台から足を踏み出そうとした者がおってな。長者どんの息子どんに気づいて、たまたま、こう言ったそうな。

「長者どんの息子どん。オラは払える税は全部払って、嫁も娘も売りに出した。でも、税がきつくて、それすらももう何も残っていないのです。どうか、せめて死に際くらいは目をそむけてもらえませんか」

長者どんの息子どんは、功徳を積んだ優しい声でこう言いました。

「まだ税が足りないのだね。お前が死んだあと、さらに厳しく税をかけよう、お前の名でね。あと、嫁も娘も俺が抱いた。締まりのないババア醜女だったぞ」

ろうそくの炎が燃え尽きようとするとき、はげしく光り輝くように、首を括ろうとした村人は、長者どんの息子どんに掴みかかろうとしたそうな。

けれど鍛え抜いた長者どんの息子どんに押さえつけられると、ピクリとも体が動かなかったそうな。

泣きながら「もう嫌だ、助けて」という村人に、長者どんの息子どんは、為政者としての矜持をその後光に輝かせながら、

「つまらない死に方だな」

と言って、踏み台を蹴ったので、村人は無事昇天したそうな。

長者どんの功徳が、また高く高く、積まれていった。

めでたしめでたし

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