もともとこの分野の研究者は少ないから、関連した分野で学位をとった人を採用して分野の基礎的な部分から教えている。だから教育に多少時間と手間がかかるのは承知していた。これまでの人もそれでうまく行っていた。でも、この人にはいくら教えても話が噛み合わない。ようやく気がついたのだけれど、どうやらこの人は言葉の定義をあまり重要視していないようだ。
定義なんていい加減でいいと思っているから、初めて触れる言葉についていい加減な理解のまま進めようとする。
定義なんていい加減でいいと思っているから、理解を試すために数式を書かせて説明させようとすると、式の途中から適当な記号に置き換えて書く。
昔、数学が苦手な学生の面倒を見ていた時によくこういう光景を見たよ。この人も数学が苦手なんだろうな。
この人が学位をとった分野(理系分野ではある)では、あまり数学ができなくてもなんとかなるらしいことは知っていた。そのせいだろうか。それにしてもここまでとは。
科学として成立させるためには、言葉の定義と数式には常に注意を払わなければならない。
どう教えていったらいいんだろう。さすがに博士号を持った人に数学から教えるほどの余裕はない。根気強く対処療法するしかないかな。