朝、目やにのついた顔を擦る。黄色く、カピカピとした目やにが涙の形になってこびり付いている。私は顔を洗う元気がないから、手で擦って取ろうとする。すると数本の睫毛も共に抜け落ちて、老廃物の不愉快を感じる。目やにを指で拭うと、今度は鼻の角栓が気になってくる。ぽつぽつと、鼻の毛穴を押し広げ、硬い脂の塊が黒ずんだ角栓が。今度は頬一面を覆う、拡大したときにだけ見えるような、ニキビとはいえないほど小さなニキビの群が気になる。それらはそれぞれに新陳代謝を起こして、かさぶたのように、ビニールのような硬質になった皮膚として、私の指の邪魔をする。顔は満遍なく脂で覆われている。顔中からその温度の低い脂が、蝋のようにうっすらと浮き出ていて、臭う。甘いような、獣のような、そのような臭い。最近は口も臭う。ふと気を抜いたときに、唾液で濡れた歯が空気で乾燥したときに、臭う。特にマスクをしているときに、自分へ跳ね返ってくる息の臭さは形容し難い。私の寝巻きからはなぜか正露丸の臭いがする。頭からは、頭皮の脂の臭いが。そして、脇からは酸っぱいような臭いが。性器を洗うと、恥垢の臭いが。なぜか、幻臭もする。煙草の幻臭。この家には誰も煙草を吸っている人がいないのに。
晩節を汚したくさのしんぺいのような文体だな。
誰ですか、それは。