2019-10-25

「確かに、叢雲の剣により雨が降り、即位の礼の時は一瞬雨が止み虹がかかった……」

「そして台風は進路を逸れ、世の中は平穏を取り戻した」

そう教授は言うと、コーヒー一口飲み息を吐いた。

「と、いう事はですよ!?やはり天皇陛下によってこの日本の人心と天候の調和は保たれたんですね!平成に変わる時も、大きな台風が来て、同様の事が起きたと聞きました!」

生徒は興奮した面持ちで、矢継ぎ早に言葉を連ねた。

暫しの沈黙が、教授と生徒の間に流れる。間を置いて、教授は口を開いた。

調和、というのは人間本位のものだ。自然本位じゃない。逆に言うと、叢雲の剣が出される時、天は荒れる、と考えた方が自然じゃないか

まり……今回の水害も、叢雲の剣を持ち出したことによるもので、我々があの巨大な台風を呼び起こしてしまったと。

天皇陛下とあの儀式は、確かに人の為のモノであるが、それによってこの日本の天候と人心を支配しているとは、

いささか冒涜が過ぎるのではないかと思う」

生徒も教授も黙る。強い雨の、研究室の窓に打ち付けられる音がただこだましていた。

  • このあとゼミ生みんなで帰宅しようとしたら帰れずに、大学に泊まる羽目になる。   そして研究室にある叢雲の剣(レプリカ)で序盤フラグたててた男子学生が一人殺されているのが見...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん