「この可愛らしい小みかんは人に噛み付いてしまったがために殺処分されることが決まっているのです。それは忍びないので皆さんに是非召し上がって頂きたく訪問に参りました」そう言ってOL風の女性は紙袋の中から7センチほどの小ぶりな蜜柑を無表情で差し出してきた。人に噛み付いた...触っても大丈夫だろうか。躊躇して手を出せないでいると、察したのか女性はニコリと微笑んだ。「安心して下さい。世界では年間47万人が殺人によって殺されています。人間に比べれば、よっぽど無害ですよ」そう言われると、確かにその通りのような気もする。本当に警戒するべきなのは人間なのだ。玄関の傘立てに立てかけてあった錆びたゴルフクラブを女性の肩を目掛けて思い切り振り下ろすと、紙袋は地面に落ち、中の蜜柑は四方に散らばった。「次は顔面を狙う」二撃めで確実に終わらせるため先ほどより更に大きく振りかぶった瞬間、ふと我に返った。蜜柑に罪はない。悪いのはいつも人間だ。
増田ってたまに才能にあふれる日記が流れてくるよね