薄々気づいてはいたのだが、女性と食事に行って、全額負担されるのが当然だと思われるようになった。
黙って伝票を渡してくる彼女たちの顔には「どーして私がこんなものを触らなければならないのだ」と書いてあり、笑顔も浮かべない。
ついさっきまで盛り上がっていた会話が冷めきる。
こちらは落胆しつつもほっとする。
お互いにもう連絡することはない。
もうこんなことを何度も繰り返している。
最寄りの駅までの移動中、電車の窓の外を見ていると、滴が窓に当たり出して、それはすぐに結構な勢いの急な雨になった。
ホワイトノイズを優しくしたような雨の音が、線路から響いてくる規則的な音と重なるのが心地良かった。
暗い窓の外では、車内の光を浴びた水滴が白く煙っていた。
その光景をぼんやりと見ていたら不意に、自分は彼女たちにとって金を払わないのなら会う意味のないおっさんなのだと気がついた。
今まで金がなくても一緒にいてくれる誰かを見つけられなかった。
今よりも若くなることの無い明日以降、そんな相手を見つけることはもっと難しいだろう。
電車を降りたら雨が上がっていた。
誰も待っていない家へ帰るのにはすっかり慣れていたはずだった。
でもその日は酷く辛い気がした。
そしてそれはその日からずっと続いている。
奢られ当たり前の若い美人ばっかり狙ってないか?