金曜日の19時。仕事終わりのサラリーマンで賑わう繁華街の外れ。
待ち合わせ場所に現れた女は写真で見ていたのとは全くの別人で、ゆうに80kgはあるだろうと予想された。
いかにも慣れた様子で「行こっか」と歩き出した彼女の後ろを僕はひどく惨めな気分で着いてゆく。
「経験が少ないです!」と言っていたのは本当にこの女か? 「よければドライブでも行きましょう!」と言っていたのは本当にこの女か? この女は本当に22歳なのか?
訳もわからず腰を振った。どこか自分を俯瞰的に見ている自分がいて、なんて間抜けな姿なんだろうと思った。
女はすぐに帰って行った。さようなら、僕の1万8千円。
やりきれなくて飲めもしない酒を飲んだ。がぶがぶと飲んで、気付けば23時半を過ぎようとしていた。
週末の最終電車に青白い顔で乗り込む。飲み過ぎで気分が悪い。
なんとか座席に座って周囲を眺める。同じように飲み過ぎたサラリーマンが、フラフラとつり革に掴まっている。醜い。
電車の揺れは心地良い。僕はこのままずっと目的地に着かなければ良いのにと思った。
0時を回る頃、最寄り駅に着いた。尿意を感じてトイレに駆け込む。
この駅のトイレはひどく汚くて、僕は極力使わないようにしている。この日も、小便器の周囲は誰かが零した小便で濡れていた。僕はその上に立つ。
隣の便器におっさんがやって来て、吐息と共にビチャビチャと小便を始めた。
思わず「汚ない小便しやがって」と呟いた。
小便に汚いも綺麗もないだろう。
次の日の朝は起きられなかった。