2016-11-24

先生の一番になれなかった

塾の先生が大好きだった。

知識豊富で、視野が広くて、感受性が豊かで、面白くて、人としての魅力がたくさんあってその人の傍にいるだけで胸がいっぱいになった。

気にかけて貰えると嬉しくて、認めて貰えると涙が出てきてしまいそうになった。

先生のようになりたくて勉強を頑張った。勉強をしていくうちに学ぶことが楽しくなっていった。

それから様々なものに興味を持つようになり気が付いたら、今まで見向きもしなかったものを好きになっていた。

ものの考え方も、捉え方も良い方向に変わり、人との出会いや一時一時を大切にするようになった。

辛いことも、悲しいことも、先生がいたから耐えられた。

その時の私は先生が「カラスは白だ」と言えば何の疑問も抱かずに「カラスは白なんだ!!!」だと思ってしまうくらい単純だった。

高校卒業しても先生の傍にいたかった。

先生の隣で生きて行きたかった。

けれど、この時点で先生に対する気持ちを拗らせていて「尊敬」なのか「愛」なのか自分でもよくわからなかった。

結果、「先生のようになりたいんですがどうしたらいいですか」と言うことしか出来なかった。

これが私の先生に対する精一杯の「好き」だった。

先生は「俺のようになることは出来ないだろうな。お前は結婚をして幸せを感じることが出来る人間からな」と困ったように笑って言った。

泣きたくなった。

はっきり自分気持ち言葉にしなくては伝わらないことをわかっていたが、自分でも把握出来ない拗らせてしまった好意を口にするのは重たすぎて出来なった。

先生と一緒に働きたい」と言えば良かったのか、「好きだ」と伝えれば良かったのかわかりはしない。

頭が良かったら? 美人だったら? 先生と似たような人間だったら?

どんな人だったら先生に選んでもらえたんだろう。

私の中で先生が一番だったように、先生の中で私が一番になりたかった。

「運命」「奇跡」なんて選ばれた人にしか来ないものだと思っていたのに、まさかそれが自分にくるとは思ってもいなかった。

私にとって先生との出会い「奇跡」のものだった。

でも、先生からしたら私との出会い「運命」でも「奇跡」でもなかった。それだけだ。

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