2歳もすぎれば食べるものも飲むものと大人とは大差がない。だから子供だろうと臭いものは臭い。
娘は確かに可愛いが、かと言って臭いまで可愛いわけではない。どれだけ愛情があろうとなかろうと、臭いものは臭いのだ。
それに加えて朝のゴミ出しは僕の担当だ。週に2回、出勤前に風呂場と寝室に置かれたガキの臭いおむつ溢れるゴミ箱の袋を取り替えるのも当然僕だ。
蓋をあけるとアンモニアの臭いが鼻を突く。夏場となればなおさらだ。いくら息を止めながら袋を取り出しても、なんとも言えない臭いが鼻を突いてくる。
大きい方をしたときは流石に小分けで処理するからいいが、それでも毎回フタを開けるのが憂鬱でしかたなかった。
ところが数日前に、突如として娘はトイレに目覚めた。
娘と同い年の友達が平然とトイレで用を足す姿をみてスイッチが入ったらしい。
今まで寝起きには必ずといっていいほど尻から垂れ下がっていたおむつも、その日を境にぴたりと濡れなくなった。
小さい方も大きい方もさっさと自分でトイレに走り、終わったら元気よく「出たよ!」と親を呼ぶのだ。
そんなにも突然変われるものなのかと、生命の神秘には驚かされるばかりだ。
家族がまだ寝静まる早朝、そんなことを考えながらゴミ捨てのためにおむつ専用ゴミ箱に手をかけると、いつもと違うことに気付いた。
中には確かにおむつが入っている。でも、当然用を足してないから臭いがないのだ。
習慣のようにフタを開けるときにいつも息を止め身体をこわばらせていただけに、全くもって拍子抜けしてしまった。
嫌だ嫌だと思っていた習慣も、突然終わりを迎えるとこんなにも寂しいものなのか。
臭くなくなってほしいと願っていたはずなのに、なにか物足りない気分だった。
なんともやるせない気分のまま、寝ている娘の頭を撫でそれとなく頬にキスをしてみた。
すると娘は突然パチっと目を開け、ふにゃふにゃと笑いながら言った。
「パパくさいー」