あの人は今日もやって来た。
「疲れが取れたせいで頑張り過ぎちゃって、また疲れが溜まっちゃいました。」
予想通りだ。
きっと元気になったらまた疲れて来るだろうと思っていた。
「なんか無いですかね。」
そして、徐ろにカウンターに飾ってあった花瓶を見た。
「これいい花瓶ですね。」
と言った。
この前実家に捨ててあった花瓶を適当に拾ってきて飾ってあったのだ。
その時、私の中の何かのスイッチが入った音がした。
私は、
「分かりますか。これはうちの薬局に代々伝わる由緒正しき花瓶なんです。あらゆる病を取り去る効果があるんです。今の薬局があるのはこの花瓶のおかげなんですよ。」
何言ってんの私、そんなキャラじゃないのに!と焦ったが、その人は、
「ええ、すごいですね。疲れにも効きますか?」
と漏れ無く言ってきた。
「もちろんです。ただこれは最終手段ですよ。まずは触れるだけでいいでしょう。毎日来る度に触っていってください。」
「触るだけでいいんですか?」
「はい、強力なので。まだ手元に置いておくべきではありませんから・・・」
私の中の悪い私が脳みそに入り込んで言ってくる。
悪「こういうのは気の持ちようだ。効くと思えば効くんだ。気にするな。」
悪「詐欺ではない、実際に良くなっているではないか。」
良「でも・・・」
悪「デモもパレードもあるか!あの人のためじゃ!ほれ鏡を見てミイ!お前の目ん玉がカイジに出てくる悪役と同じ目になっておるぞ!」
良「きゃああああああああああああああああああああああ」
私はここで目を覚ました。
夢だったのか、良かった。
昼寝をしていたようだ。
その時、午後の最初のお客さんが来た。
あの人だ。
あの人は入ってくるなり言った。
「この花瓶いいですね。」