電車でつり革をつかんで立ってると、目の前におっさんみたいなじいさんが座ってた。これも普段通りの風景だったから全く意識せず、ぼんやりと外を眺めてた。
この寝ぼけたじいさんが、でかいあくびをしたんだ。立て続けに三回くらい。当然、じいさんに目が行く。そこでじいさんの口の中を見てしまった。
鳥肌が立った。
所々抜けて、不規則な方向に伸びた歯。虫が巣でも作ってそうな口の中にぞっとした。俺は、じいさんが口を閉じた後でも、このじいさんを何か別の、得体が知れない生き物だと思ってしまった。
あぁ、これがキモいということなのか。この場から逃げてしまいたい。冷や汗がでる。
・・だが、じいさんはヒトなんだ。これは差別意識だ。こう思う俺はクソ野郎だ。俺は見た目に惑わされているだけだ、と自分に言い聞かせた。
なぜ、俺はじいさんを別の生物だと思ってしまったのか。あと50年後には俺もじいさんと同じようになるに違いない。だが、キモいと思ってしまった。
後々よく考えてみると、キモいと思ってしまってる原因は、意識せずに自らと対比しているところが大きい。その差が大きければ、相手を別の生物だと思ってしまう。
これは、女子高生がおっさんを嫌悪したり、真面目君がギャルをキモいと言うところと同じ構造なのではないだろうか。これに従うと、気にする異性と同じ身なりをすることは確かに理にかなっている。
正直、ある程度はキモいと思ったり思われたりすることは、仕方がないことなのかもしれない。人間だから。気になる相手がいるのなら、やはり、タイプに応じて相手に合わせる努力が必要なのかなと思う。