お天道爺さまは何度も告白をしましたが、雲美ちゃんは首をけっして縦には振りません。
お天道爺さまは、断られるたびに、どうしたら雲美ちゃんを落とせるかと知恵をしぼり、からだの光を調節してちょうどいい明るさの雰囲気を演出してみたり、雲美ちゃんが目立てるようにあえて隠れて機嫌をとってみたり、ときには星太くんや月男くんの協力をあおいでみたりと、いろいろ努力はしましたが、それでも雲美ちゃんはお天道爺さまの求めを拒むのでした。
ある夜のことです。サンタクロースさんやトナカイさんが忙しそうに走りまわる空のうえで、一日の務めを終えた青空くんが、眠たそうにたたずむ雲美ちゃんに聞きました。
「お天道爺さまは、たしかにおじいさんだけれど、誰よりもカッコいいし頭もいい。どうしてそんなに彼を嫌うの?」
雲美ちゃんは、もくもくした髪の毛を恥ずかしそうに掻きながら、小さな声でこう答えました。
「だって、私がお天道爺さまを受け入れたら、地上の人たちが困るから...」
「なんで?地上の人たちだって、君たちの結婚を喜ぶとおもうよ」
「私が追い返したあと、お天道爺さまは、おうちに帰るでしょう」
「うん。立派なおうちに帰って、しばらく籠もっているよね。知ってるよ」
いよいよ恥ずかしそうに顔をそむけながら、雲美ちゃんは言葉をつづけます。
「お天道爺さま、おうちに帰って、その、私がすげない態度だったから...」
小僧の青空くんでもさすがに察しが付いたのでしょう、納得したようにうなずいて、
「あっ、そっか。お天道爺さま、泣いているんだね。その涙が、地上の人たちに雨として降りそそぐのかあ。雲美ちゃんが断らないと、雨が降らなくてみんなが困っちゃうもんね。えらい!雲美ちゃん!」
雲美ちゃんは、急に青空くんの顔をじっと見つめます。わかってくれない青空くんを見かねて、はっきりと言う決心がついたようです。
「ちがうの。お天道爺さまはね、いったんおうちに帰って、私の態度を思い返して激怒して、準備をしてから、また私のところにやって来て、それで、私の顔に、薄いけれども、いっぱい、いっぱい.....」
青空くんの顔がますます青くなります。雲美ちゃんの美しい瞳が、月男くんの照らす明かりに反射して、きらきらと宝石のように輝いています。自分が犠牲になってでも地上の人々の幸福をねがう、雲美ちゃんのけなげな心がけに感動し、青空くんは、涙をながす雲美ちゃんを抱きしめ、そのまま二人とも横になりました。その日は世界中がホワイトクリスマスになったとかならなかったとか。