40年後くらいに、音痴が障害として認められるのではないかと密かに思っている。
音痴という表現は差別的とされ、「音ち」などの言い換え案がいくつか出た後、最終的には「広汎性音程障害」みたいな大層な名前がつく。
これにより日本発祥の文化であるカラオケが衰退に向かう。カラオケは音痴の人の人権を侵害するからだ。
かわりに伝統的な歌である和歌や連歌、俳諧が再燃する。みんな酒を飲んだ二次会とかで、季節の歌を歌ったり伝統的な和歌のパロディとかで盛り上がる。酔って短冊や掛け軸に自分の歌を書いたりする。
人間は公の場で放歌することをしなくなる。上手に歌を歌うことは、音痴の人への差別になるからだ。
メディアでは音程をほとんど気にすることのない歌が、当局の現在よりずっと厳しい検査のもと歌われる。
こうして人類の発展とともにあった「歌うこと」は人間の手から離れ、人間は進歩か退化かどちらともとれない新たな次元へ進んでいく。