みごとに様変わりしていた。
訪れた友人の家では、部屋のドアの前に座っていて邪魔だというだけで、
12歳の兄が8歳の弟の腹に容赦なくつま先を蹴り込んでいた。
震災以降、つまらないことで感情が爆発することが増えたという。
海の方に行けば、なんだろうかあれは、本当に夢みたいな感覚。
道路もめくれ上がっていて、どこにどう道がはしっていたのか思い出せない。
波打ち際が記憶より大分手前に迫っていて、岬の崖の一部が崩れていた。
瓦礫の真ん中に立って、まわりをみるとまさに「ぐにゃあり」。
東京へ帰ってきて1ヶ月以上経つけど、未だに現実感が戻らない。
電車に乗っても、街を歩いても、なにがどうなっているのか全然わからない。
頭の骨の中に綿が詰まっていて、脳みそがパサパサになってすっかり水分がなくなってしまった感覚。
仕事をしていても、人と話していても、本を読んでも、映画を見ても、脳みそがまったく働かないので、なにがなんなのかさっぱりわからない。
全部テレビの向こう側のような感じだ。
しんどいことに、親しかった人たちのことがどんどん鬱陶しく、嫌いになっていく。
へらへらと日常を続ける。人と会うのがとにかくしんどい。
こうして、へらへらと何事も無かったかのようになんでもないかのようにできない奴は置いてきぼりをくらうんだろうな、
と思って偶にものすごく恐くなる。でも、芯から心も身体も動かない。
1ヶ月も経って情けないなあなどと思うけど、どうにもできない。
距離や場所、惨劇の種類が違うだけで自分の知らない海外でも 今まさに悲惨な紛争なんかあったりするんだよな。 と、無理やり問題を矮小化してみたりする。