2023-11-23

ボッコちゃん2023

そのロボットはよくできていた。

バーマスターによるお手製。

一見してロボットと分から容姿

美人である

その美貌を目当てに常連客が付き、バーは安定して繁盛をしていた。

しかロボットの頭はからっぽだった。

それでもオウム返しと語尾変化ぐらいの機能は携えていた。

それからもう一点…。

きれいなネックレスだね」

きれいなネックレスでしょ」


「何の映画が好き?」

「何の映画が好きかしら」


好きな人はいるの?」

好きな人はいるかしら」


「こんど一緒に食事に行こう」

「こんど一緒に食事に行きましょう」

こんな具合だから客はロボットに惚れた。

ある日やってきた青年例外にあらず。

たちまちロボットに惚れてしまい、それから毎日通う常連に。

その日、青年仕事で大きなミスをしてしまい落ち込み自暴自棄

仕事で失敗したんだ」

仕事で失敗したの」

「もう駄目だ」

「もう駄目なの」

「来れなくなるかもしれない」

「来れなくなるの」

さびいかい?」

さびしいの」

「本当にそう思ってる?」

「本当にそう思ってるわ」

「きみはうそつきだ」

わたしうそつきよ」

「ぼくはばかだ」

あなたはばかよ」

ロボットオウム返しと知らず、青年はそこで逆上。

座っていた椅子を持ち上げ、ロボットに振り下ろそうとした。

ちょうどマスターは席をはずしており、急な行動に青年を止める者も居ない。

椅子ロボットに振り下ろされようとしたその瞬間。

ロボット美人顔が一変。

阿修羅のような顔に。

「オラァ!」

スタイルのよい美人の体のまま、右ストレート青年の頬に。

うげえ。掲げた椅子を落とし、のけぞる青年

「く、くそがあ!」

青年、逆上したまま今度は殴りかかろうとロボットへ飛びつく。

ロボットボクシングスタイルで待ち構え、飛び掛ってくる青年へ拳のラッシュ

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

ぐええ、吹っ飛ぶ青年リタイア

きゃああと客の間で悲鳴が上がり、駆けつける店長

そこで状況を見て察した。ああこれは。

柄の悪い客対策として備え付けた、”フルボッコちゃんモードだ、と。

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