塔は「ご維新」の頃落ちてきたという。
その塔の主人となる大叔父は「本を読み過ぎておかしくなってしまった」という。
どんな本を読んだのだろうか?
「ご維新」の頃というのがいつか? というと、例えて言えば黒船がやって来たのが1853年だそうである。
大叔父はマルクスの「資本論」を読んだだろうか。おそらく読んだであろう。
「君たちはどう生きるか」の主人公の父親は戦時下において軍需産業で儲ける男である。
軍国教育を行っているであろう学校に対して300円寄付をして「学校なんて行かなくていい」とも言う。
鳥である。
ペリカンはどんなに羽ばたいてもその「世界」から逃れることができない。
死を予期したペリカンは「ひとおもいに殺してくれ」と言う。
インコ大王と一緒に大叔父のいる場所に行ったモブインコ2匹は、
しかし、そこは極楽などではなく、まさにいま崩壊しようとしているのである。
そして、その世界の存続を願っているはずのインコ大王の暴走によって崩壊してしまうのだ。
石によって、世界を司ることができるのが大叔父の血縁でなければならないとされている。
例えば北朝鮮のような国であったり、もしくは江戸時代の日本かもしれない。(あるいはもしかしたら戦争以前の天皇制かもしれない。)
そして、支配層が「血縁でなければならない」理想の世界は、崩壊するのである。
「君たちはどう生きるか」は広告を一切しなかった。
広告というのは、資本主義の象徴のようなものかもしれないと考える。
北朝鮮や旧ソ連のような共産・社会主義的な「"理想"の世界は崩壊する」が、かといって「資本主義の象徴」を使用しないという選択をしたのだろう。
川上量生は一時期ジブリに所属していたが(宮崎駿に怒られているシーンの動画が有名だけれど)、
川上といえばニコニコ動画であり、今回はニコニコ出身といっていいだろう「米津玄師」の曲を主題歌として起用した。
ネット出身の米津を主題歌歌手として起用するというのも「資本主義の象徴」を使用しないという選択かもしれない。
「君たちはどう生きるか」はそういった作品であった。