2020-11-15

クリスマスの思い出

2000年12月24日、父が死んだ。バイクでの事故だった。当時の私は8歳だった。

まり良い家庭とは言えない家に育って、家族の仲は悪かった。今でも母も父も嫌いで仕方がない。両親は反対を振り切って私を生み、親戚らには関わらないようにしていた。父は酒を飲めば私や弟に暴力を振るったし、母はただ静かに泣いていて解決をしようとしないだけの人間だったような家だった。4人暮らしの6畳1間のアパートの壁は経年劣化だけじゃなくて父が暴れた際の傷でいっぱいになっていたのを覚えている。

最近見つけた、7歳の時の作文には父が知らない女に金を使い旅行に行けなかった悲しみが綴られていた。その時の女は私が学校から帰ってきたら父と何やらしていたのが印象に残っていて、大人になってからそれが明確な不倫だと知った。

酔っていない時の父は寝ているか二日酔いで吐いているかのどちらかだった。

8歳のクリスマスが近づいて、今年のクリスマスプレゼントは小さなクリスマスツリーの下にプレステ2をお願いした手紙サンタに宛てて置いていた。この頃の父は酒を飲んでも飲んでいなくても暴れ、暴力を振るい、私たちは常に怯えていた。

そんな父がある日突然家の中で遊んでくれた事があった。父は私と弟を可愛い子供の若く良い父親を演じる小道具として扱っていたから外では優しかったけれど家の中で遊んでくれたのは後にも先にもこの1回だけだった。突然の父の豹変に戸惑う事も無くただただ喜んで遊んでいた。かくれんぼをした。父が乱雑に積まれた服の中に隠れていたのを全く見つけられなかった。意味の無い話もした。内容は全く覚えていない。

その翌日、父はバイク事故で死んだ。

その年にサンタは来なかった。

父のバイクの後ろに何故か乗っていた明るい包装紙に包まれプレステ2事故に巻き込まれグシャグシャになっていた。

その後の事はあまりよく覚えていない。

年が明けて気が付いたら苗字が変わり、更に古いアパートに母と弟と3人で暮らした。

今年、12月になったら私は苗字が変わる。10年付き合った人と結婚をする。

あの日亡くなった父の年齢は超した。

私は良い母親になれるだろうか。

未だにクリスマスの飾り付けを見るとあの嫌いだった父を思い出して憎しみに駆られるし、同時に何故か寂しい気持ちになる。

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