2020-10-07

毎日滅亡する足立区さん。

 あのときから足立区毎日滅亡している。

 足立区同性愛者同士が接触すると対消滅アナイアレイション)が起こるようになった。それでどうなるかというと、水素爆弾10発分(広島に落ちた原子爆弾計算すると6600発分)の爆発が生じ、衝撃波地球を三十周する。

 そんな威力なら足立区どころか日本のものが危ないのではないか、と思われそうだが、そのとおりである足立区が滅びるついでに日本も滅んでいる。しか日本など足立区付属物にすぎないので、ここでは論じない。

 われわれにとって重要なのは足立区だけだ。

 なぜなら足立区対消滅真実の愛の証だからだ。

 対消滅はある物質完璧対応する反物質あいだでしか起こらない。

 アリストパネスが語ったところによれば、人間はもともと頭が二つで手足が四本ずつの生物であったが、その欠けるところない有能さを恐れた神々から真っ二つに割られ、今のわれわれのような頭がひとつで手足が二本ずつの姿になった。同性愛者たちはその太古の記憶を保っているのだという。自身の完全な半身を忘れないひとびと。

 そして、その熱情が、神話的な完璧がゆえに足立区を滅ぼすほどに爆発する。

 滅びからまた生じるたび、足立区のひとびとはまずドクターシライシの像を建てる。百万回以上生滅を繰り返した今となってはその業績を語る史料も残っていないが、足立区伝承によれば、「足立区真実の愛を発見した最初人物であるとされている。研究者ではなく、政治家だったという説もあるが、詳しいところは判然としない。

 いまや足立区真実の愛の集う地となった。

 世界中からもうひとつの半身を求めるひとびとが押し寄せ、ささやかマッチングが成立するたびに京すら超えて垓に達するジュールの熱を放つ。

 それは足立区しか体験できない愛の温度だ。


 

 ーーあだちというまちには、底ぢからがある。

 ときにやさしく、ときにきびしく。

 したたかに長い歴史をつむぎ、

 ともに、ちから強く生きてきた、

 あだちのまちの仲間たち。

 からいま、

 ふみだそう、新たな一歩を。

 ここ、あだちから

 まれ、あだちのちから


 

 ーー足立区名もなき詩人の詩より 

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