上京して初めてできた彼女は、おしゃれでかわいらしくてちょっと裕福なおうちに住むお嬢さんでした。
私は身嗜みに気を遣っていたけど、派遣でお金のない貧乏な家の子でした。
築35年の古アパートに住んで、2回のデート以外はもっぱら古アパートで過ごしました。
ほんの少しの出費で生活が立ちゆかなくなるような懐事情でしたし、その不便さで心が狭くなり、交際は長く続きませんでした。
その後は私も別の人たちと交際をしましたが、心根のどこかにはずっと彼女の姿がありました。
彼女は結婚を見据えて、職場の男性とお付き合いを始めたばかりでした。
「あと少し早ければ、また付き合っていたかもしれません」と言われたとき、涙が止まりませんでした。
意気地も勇気もなく、だらだらと過ごしていた時間で、チャンスを失ったのです。
もし再度交際ができていたとしても、見据える地点が異なれば、遠からず破局するであろうことは自明です。
その後、転職して収入を上げました。「仕事ばかりだと婚期を逃すよ」と冗談交じりに話すオヤジには心の中で中指を立てます。