2019-11-10

そうして、人は悲しさや喪失すら失くして生きていくことになる

あたし忘れかけてる

お母さんの顔 忘れるはずないのに一瞬浮かばなかった

大好きだったお母さんの匂い

服は全部取ってあるのにもう防虫剤で分からない

いやだ 悲しくていい 忘れたくない お母さんのそばにいるんだ

私屋カヲルこどものじかん10

もう一度思い知ったから 色褪せていくこと

“思い出”に変わっていく

身を裂くようなさびしさを 悲しみを

忘れることはなくても 鮮やかな記憶として残せない

どう言い繕ったって どんなに どんなに誓ったって

時は動き 褪せていく残酷なほど

悲しくて そんな事実が悲しくて悲しくて

なのにもう 止まらない

お母さんを一番に想っていた私は“思い出”になっていく

まらない とまらない

高屋奈月フルーツバスケット20

この数年間、とにかく前に進みたくて届かないものに手を触れたくて

それが具体的に何を指すのかも、

ほとんど脅迫的とも言えるようなその思いがどこから湧いてくるのかも分からずに

僕はただ働き続け

気づけば、日々弾力を失っていく心がひたすら辛かった

そしてある朝

かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが綺麗に失われていることに僕は気づき

もう限界だと知ったとき

会社を辞めた

新海誠秒速5センチメートル

三界狂人は狂せることを知らず

四生の盲者は盲なることを識らず

まれまれまれまれて生の始めに暗く

死に死に死に死んで死の終りに冥し

弘法大師「秘蔵宝鑰」


死にたいエントリを書き散らし、はてブに煽られるのを繰り返さなくなって、もう何年経つのだろうか

真夜中にポエム製造しなくても生きていける人生に、いつからなったのか

自殺する想像が浮かばなくなって、もうどのくらいになるのだろうか

“――かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが綺麗に失われていることに僕は気づき

そうして、人は悲しさや喪失すら失くして生きていくことになる

そんな、何もない人生を送るくらいだったら

もう一度、もう一度だけでも、その喪失と傷付きを再体験

今度こそ悼みを魂の奥深くまで刻み付け

自らの血の痛みと温かさに酔いながら生きていきたい

何もかも忘れて、ぬるま湯のような平穏を生きるなら

どこまでも溺れて、苦しんで、藻掻いて、傷付いていたい

私は、自分の生と死と不在と欠損と希求真摯でありたい

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