2017-05-16

担当をやめた話

はじめは沢山のうちの1人だった。

彼の名前は知らなかった。

気付いたら彼を目で追うようになっていた。

彼のことを調べた。

彼の名前を知った。

彼の名前検索フォームに入れた。

彼が出ている雑誌テレビといったメディア類は隈無くチェックした。

彼が出演している舞台コンサートにもたくさん足を運んだ。

しかった。

彼の前にも応援している人がいた。

けれど、その人はデビューしていて、言うなれば安定している。

しかし彼はまだデビューしていない。

不安定な中で活動していた。

いつ、彼が、この世界から足を洗ってしまうか、わからない。

自分のことを応援してくれている人がいる」

そう彼に知ってもらいたかった。

君の活躍を楽しみにしている人がここにいるんだ、と。

君にもファンはいるんだよ、と。

自分なりに、一生懸命応援した。

彼を応援し始めて数年、彼の周りの環境が大きく変わった。

今思えばこの辺りから少し自分心持ちは変わり始めていたのだろうと思う。

それでも必死に彼についていった。

だって、彼の、彼のファンに対する態度やパフォーマンスが好きだったから。

それからも変わらず、舞台コンサートに沢山通った。

初めて多ステした。

初めてグッズの複数購入をした。

初めて目当てがメインじゃない扱いのコンサートに行った。

初めてファンレターを書いた。

初めてチケットを血眼で探した。

たくさんの初めてを彼に捧げた。

彼を好きになって数年、

「彼を応援したい」

いつしかそれが、

「彼を応援しなきゃいけない」

になっていた。

どこかで、今の彼は自分が好きだった彼とは違うことはわかっていた。

それでも認めたくなかった。

彼を好きなことに違いはなかった。

一番に彼を応援していたかった。

ある時、彼の言葉を聞いた。

そこに昔の彼はいなかった。

彼が変わってしまったこと、

義務感で彼を応援していたこと、

その2つに気付いてしまった。

そして決めた。

彼の担当を名乗ることを辞める。


今日わたしは、この子担当を辞めます

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