2015-12-17

[] 増田ねこはどこへ消えた?

親愛なるマス4545へ。

なぁ知ってるか? 先月、増田野生生物局(MWS)が『増田ねこ絶滅宣言』を出した。馬鹿言ってやがる。増田ねこ絶滅しただって? 俺はMWSの奴らにトイレ便器でも投げつけてやろうかと思ったさ。

第一部隊を覚えてるだろ。ネコ探しに《呪いの密林》に行った連中だよ。あいつらの行方が分からなくなって、もう八年だ。増田ねこの目撃情報も、二〇〇九年を過ぎてからひとつもない。俺らは完全に手がかりを失ったんだ。

誰が想像できるもんか。一昔前は匿名ダイアリーをあれほどまでに賑わせていた増田ねこが、今じゃ一匹足りとも見つからねー、消えちまった。ねこ果たしてノアの箱舟にでも乗って増田の地を離れてしまったんだろうか。俺たち増田探検隊第七七四部隊は、まだ諦めちゃいない。絶対増田ねこを見つけてみせるさ。

消印――2015-12-16)

※※※※※

隊長ー、もう帰りましょうよー。家に帰ってモンハンしたいんっすけどー」

新入り増田コードネーム:マ須田072)が言った。まったく、本部はどういうつもりでこんな腑抜けを俺の隊に配属したのだ。

馬鹿言え、今日こそ増田ねこを見つけるんだ」

俺たちは巨大な虫取り網を背負って、森を探索していた。そろそろ日が暮れる。ヘルメットライトONにする。

「僕、増田ねこなんかより、アイルーの方が好きっす」

須田落ち葉を踏みしめながらぶつくさ文句を垂れている。俺は頭にかっと血が上るのを必死でこらえた。今や我が隊は、須田と俺の二人しかいないのだ。

辺りは暗闇に包まれている。森のなかのひらけた場所に出たとき、突如として木々がざわざわと音を立てた。

《むきゅー!》

「おい、今なにか聞こえなかったか

辺りを慎重に見回し、耳を澄ます。山の冷たい風が頬を撫でた。

《むきゅー! むきゅー!》

「ひぇぇ、オバケだぁ」

須田が震え上がって、俺に抱きつこうとする。俺は情けない後輩をなんとか身体から引き剥がした。

増田ねこじゃあねえな。増田ねこなら《にゃあ》と鳴くはずだ」

「きっと新種なんすよ。いいからもう戻りましょうよ」

「うーん、俺の考えが正しければ《増田ハムスター》だと思う」

しかとっとこハム太郎で《むきゅー!》と鳴くハムスターを見た記憶がある。てるてる坊主みたいな頭巾を被った、ハロウィンオバケのようなハムスターだった。

「違うっすよ。ハムスターの鳴き声は《ヘケヘケ》《クシっ》《ペローン》の3つですよ。僕子供の頃とっとこハム太郎で見ましたもん」

須田が震えた声で言う。

馬鹿言え、それは『ロコちゃん』の口癖だろうが」

まったく、これだから最近若いモンとは話が合わない。

《むきゅー! むきゅー!》

まだ声が聞こえている。

俺は巨大虫取り網を両手にぐっと握りしめて、茂みの奥に分け入っていった。須田は待って下さいよぉと後について来る。待っていろよ、増田ねこ。きっと俺がお前を探し出してやる。

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