第一層、はてなブログ。
だから見た目はまるで天国のようだ。無垢なブロガーたちが、そこで日々を紡いでいる。よろこびを、かなしみを、いかりを、おそれを。
第二層、はてなダイアリー。
あなたはもう手首まで汚泥のなかに突っ込んでしまっている。嫌な感触があり、肚をつく怖気があり、戻るべきだという強烈な欲求に駆られる。
泥の底へ落ち込みつつも、凶悪な笑みを浮かべる彼らが狂っていないと誰に保証できる?
第三層、はてなブックマーク。
首まで地獄に浸かってしまった。全身にまとわりつく粘ついた黒い黒い黒いタールのような何か。
kanose が悪意と呼ぶそれ。xevra のプリント用紙。ノスケのダジャレ。
それらはすべて100文字以内でできている。
あなたはもう死にたくなっているはずだ。だが、それはまだ底ではない。地獄はまだ深い。
なにもかも際限がない。魂の抜けた匿名者たちのダンス、美しきブクマカたちの嘆き、ハイエナどもの宴。
耳をすませれば、かつて店長と呼ばれていた骨だけの獣がすり減った軟骨を軋ませ、悠揚と闊歩する、その様を聴く。
ここでは誰もが死んでいる。死んだまま、動いている。彼らの死臭にも似た溜め息が100字、1000字、10000字……そうだ、地獄には際限がない。
亡霊が号令する。八方からいっせいにトラックバックが発射される。言葉のハリネズミのようになった巨獣は切ない悲鳴をあげ、のたうち回る。
弱った元増田にどこからか飛来してきたブクマカたちが群がる。息絶えた巨大な肉塊をついばむ。肥え太ったブクマカたちの雑談が聴こえる。元増田など存在しないと嗤いあっている。自分たちがいままさにむさぼっている獣の肉の実在を疑っているのだ。かつて彼らと在ったはずの友の存在を。
その祈りはすでに叶えられている。あなたの息はとうの昔に止まっている。だが、あなたは死ねない。
第五層、はてなハイク。
やがて皆が名前を取り戻した。
だが失った心までは取り戻せない。死者たちが昼間から蠢いている。交わされる言葉は殻だけ残した卵のようだ。
あなたは空を見上げる。そこに空はない。幾重にも重なったインターネットの層が天を閉ざしている。ここに光は届かない。
「なぜ死なないの? 簡単なことじゃない。退会すればいいだけ。誰にもはてなにいろなんて強制しなかったし、これからもしないわ。醜くなれとも、美しく生きろとも命じていないわ。すべてはあなたの欲望しだい」
本当にそうだろうか。あなたは滄浪と退会処理を行う。
本当にそうだろうか。あなたはもうどこにもいない。
おめでとう。