2015-03-10

会社にもお昼寝タイムをもうけよう

ランチで食べたおいしいサンドイッチことなんか、もうとっくに頭にはなかった。

そろそろ日も入り方になるころ、俺はこの日の仕事を終わらすために、パソコンの画面に食いつきながら、エクセルにせっせと文字を打ち込んでいた。

昨日もおなじように頑張ったけれど、ついに定時までには終わらず、夜遅くまで残業した末にやっと家に帰って、先週借りたままだったDVDをぼうっとした頭でみたのだった。

から今日こそはかならず定時に終わらせる。

かたい決心をもって根気よくパソコン画面に対していた。

陽気な上司がぽんぽんっと俺の右肩をたたいてくる。

妙なにやにや顔で、あすの会議についてながながしゃべり立てる。

今やっている仕事とはまったく関係のない話を聞かされたら、ふたたび仕事に取りかかるより前に、みずからデスクへ戻る上司背中の上にある、掛け時計の示す時間が、有無を言わさず俺の視界に入ってしまった。

ああ、きょうも終わらないや。

先週借りたもう一本の、新人さんのやつ、風呂上がりにゆっくり観るつもりだったのに。

きょうはきのうと同じで、また同じようなあしたへとつながっていくんだ。

はあ。

からさしこむ夕日がまた寂しさを感じさせた。

自分の両目にはいつのまにか涙がうかんでいた。

まさにそのときだったのだ。

若い女子社員が懸命に仕事をしているはずの、俺のはす交いのデスクから、ぐうぐうぐうと、大きい音なのに少しもいやな感じを起こさせない、きもちよさそうなイビキ声がきこえてくる。

この忙しいときに部下が寝てやがる。

でも俺は、怒るどころか、起こす気にもなれなかった。

まだお昼寝タイムになっていないのに眠ってしまった保育園児を、起こさずにほほえましく見つめている先生みたいに、いとおしい心地にひたりきって、ただただ彼女を見守るばかりだった。

ぐうーぐうーぐうーぐうー。

いつも鋭い目つきでばりばり仕事をする彼女から想像もできない、とろんとしたお目目と、ちょっとよだれが垂れてる半びらきのかわいいお口。

おい、このやろう、寝やがって、ばかやろう、ばかやろう。

小声でつぶやいたら、なぜか笑いをこらえきれなくなったので、俺はもういちど真剣な目をつくり、よしっと気合いを入れてパソコンの画面に向き直った。

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