2014-09-24

バーで声をかけてきた男をあしらう100の方法

もうだいぶ昔の話だけれども、俺がまだハタチになったばかりのころ調子にのってお高いバーをあちこちめぐるようになった。

きちっとスーツを着こむ。ホストっぽくならない程度に。でもちょっとだけブランドものをいれたりする。そしてなにより時間重要だ。デパート勤めのお姉さんたちが仕事を終えてバーに顔を出すのがだいたい夜10時ごろ。ころ合いだ。

お姉さんたちよりも年上のフリをするつもりはなく、いかにもハタチちょいですって顔をしながら横空いてますかって言う。相手がおっさんじゃないと見ると、結構気を許して相手してくれる。


その日もいつものように新しいバーを開拓していると、ものすごい美女がいた。ロシア北欧のほうの血が入ってそうなハーフ、それともクォーターかな? ドレスとかそんな気取った格好じゃなくて仕立てのよさそうなブラウスリーバイス、靴はたぶんJ.M.ウェストンのローファー、腰まで伸びた金髪がバーの暗がりでものすごく目立つ。


これは声かけないと一生損するだろって思い切って声をかけると、「いいけど?」って言われる。

「こんばんは、すこしお話しませんか?」

「いいけど、じゃあ、そうね。あたしの奢りを飲めたらね」

「もちろんですよ」

「じゃあマスター24マティーニ

マスターカクテルを作りはじめる。強いお酒で酔わそうって魂胆だ。俺が彼女に話をしようとすると、人差し指を唇にあてて待てのポーズ完璧すぎる。


マスター24マティーニを置こうとすると、彼女

「両手を握って親指出して」

「え? あ、はい

「両手首くっつけて、その親指をカウンターの端にのせて」

「? こうですか?」

「そうそう」

そう言ってマスターから受け取ったマティーニを両親指の上に置く。え? ちょっとちょっと

「あたしの奢りを飲めたらね」

俺がマスターに助けを求めると「彼女のいつもの手なんですよ」って言われる。ってか、これどうすんの?


その人とはそれっきりなんだけど、最近のバーじゃどんな美人もそうでない女性も声をかけると「だめよーだめだめ」って言う。そしてだいたいOKの意味だったりする。まあいいっちゃいいけどね。なんかね。

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