2008-07-16

しゃべることと、友達をつくること。

小さい頃から親に話を聞いてもらえなかった。

彼らにとって食卓は大人同士が喋る場であり、子供のつまらない報告を聞く場ではなかった。

いつも何やら難しい顔をして近所の人間関係だとか家計について話していた。

その反動か分からないが学校ではよく喋った。人見知りで内気だったが一度心を開くとバカみたいに喋った。

自分から喋りには行かないものの、勝手に周りに人が集まった。人気者だったように思う。

高校に入った。

喋りすぎは嫌われると考えたのか、仲の良い相手にしか喋らなくなった。

口数は減ったが、好きな物の話になると依然として止まらなかった。

昼の弁当を食べる暇がないくらい喋り続ける事もしょっちゅうだった。

この頃には、自分から積極的に人と交わっていかない傾向は確立されていた。口は達者だが、友達は少なかった。

大学に入った。もともと消極的な自分。活気溢れる広いキャンパスで、何をしていいのか分からなかった。

ようやくできた数少ない友人。

もっと気軽に友達が作りたかった。自分から人にぶつかっていけるようになりたかった。

自分を変えるために、アルバイトを始めた。

バーテンダー。ショック療法だ。

もともと喋るのは得意なほうだ。人見知りを発揮しながらも、先輩に気に入られお客さんに気に入られ、自分の居場所を作っていった。

初対面の相手にさりげなく話しかけ、何気ない糸口から会話を盛り上げる。毎日毎日、老若男女問わず喋る事で自分の会話する力は磨かれた。

これはもう劇的に変わったと思う。上手に話を引き出すというも覚えたし、話の流れや構成まで意識するようになった。

何より変わったのはどんな相手でも臆す事なく自分から話しかけていけるようになった事だ。

僕は自信に満ちていた。

そして1年後の今。

その後の大学生活で、話しかけられて仲良くなる事はあっても、自分から話しかけることはなかったように思う。

僕は自分の交友スタイルを劇的に変える事はできなかったように思う。

アルバイト仕事だった。仕事だからこっちから話しかけるのは普通の事だ。

それ以外の時間では自分の中のちょっと恥ずかしいという思いやちょっとしたリスクを取って、仲良くなりたいという意志表示や本音をさらけ出すという事に抵抗感を持ったままだ。

早い話が傷つきたくないのだ。

喋る事の上手さと友達を作る能力というのは、必ずしもイコールじゃない、という極めて当たり前の話だ。その実例だ。

僕が今たたかっているのは、傷つきたくない心だ。まだ、勝てない。

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