「あくまで私の考えだけどね」
A子はそのままの調子で続けた。
「推しはさ、私たちにトキメキとか幸せとかをたくさんくれるじゃない? 活躍してる推しを見れるのって本当に素敵なことよね。でも、だからと言って、推しのやることや言うことが全て正しいとは限らないじゃない」
A子は一息ついて、
A子は続ける。
「推しのこと、全部肯定して、全部信じるのって『それって本当に正しいことなのかな』って思ったのよね」
A子はどこかずっと遠くを眺めているようだった。
「推しに自分の生活や思考がすべて支配されるのは、良くないんじゃないかって最近思うのよね。それも一つの幸せと言われたら、そうなのかもしれないけど」
A子は続けた。
「でもそれが『ファンとして然るべき行動』という訳では全く無いと思うのよ。『推しは推せる時に推せ』ってよく言うけど、一旦推しから離れる時があってもいいんじゃないかって、私は思うのよね」
A子は一度下を向き、深く息を吸いながら顔を上げた。
「私の人生は私のもの、推しの人生は推しのもの。一緒くたにしたらいけないのよね」
A子はぐーっと背伸びをした。