その増田ときたら、読みもしない、観もしていない作品をいつも貶しては、威張り散らしていたのでまわりから疎まれていました。
そんなある日のこと。
いつものように三人で飲んでいると、話題は『怖いもの』になりました。
一人が「俺は炎上が怖い」といえば、そんなもんは無視すりゃいいんだよ何処ぞの馬の骨がいくら騒ごうとも気にしなけりゃいいだけの話よと増田が一蹴します。
もう一人が「宗教が怖い」といえば、信仰なんざ信じず自分を信じりゃいいだけの話だうまい話は酒を不味くするってなと鼻で笑います。
ムッとした二人は「じゃあお前はなにが怖いんだ?」と増田に聞くと、「俺は漫画がこわい」とこう言った。
「ああ、俺は名作って言われる漫画が大の苦手でね、読みでもすれば蕁麻疹が、こうばぁーっと出てきちまうんだ」
それを聞いた二人はよしよしと密かに笑い、いつものように酔い潰れた増田を家に運ぶと、寝ている間に彼の周りにハンターハンター、スラムダンク、ドラゴンボール、ダイの大冒険の全巻を置いておきました。
二人は部屋の向こうで増田が起きるのを待ち、数時間後には「うわー」「ぎゃー」といった増田の声が聞こえ、二人が笑いながら増田の部屋に入ると目に入るのは散乱した漫画。それに多いに満足したかのような増田の表情でした。
そこで一人が訊ねます。
「お前、本当はなにが怖いんだ?」
「今はワンピースがこわい」