小学校にコンピューター室ができて、コンピューターの授業を道徳とか生活とかの空き時間にやりはじめた辺りの頃だったと思う。
民法のテレビ番組で、パソコン導入に付いて行けず徐々に窓際に追いやられていく中高年の嘆きを取り上げた再現ドラマをやっていた。
パソコンに強い若手社員に少しでも追いつくためにパソコン教室に入ったおじさんが、若い女性講師の講座を受けに行く。
これがマウスで、これがキーボードで、これがモニターで、では電源をつけてみましょう、というように、パソコンの周辺機器の説明から始めていた講師に対して突然おじさんが立ち上がって怒鳴る。
ここまではうろ覚えだったけど、おじさんのこの言葉だけは間違いなく覚えてる、と思う。
「俺たちは!こんなことをやるためにここに来てるんじゃない!」
その再現ドラマを見てから20年以上経った今日、何か新しいことでも始めてみたいな、そうだ絵でも描いてみようか、「絵 描きたい 初心者」で調べてみようか。
とにかく描いてみましょう、下手でも描いてみましょう、描いてみましょう、描いてみましょう。
いやそんなんじゃねえんだよ。そんなの聞くために調べてんじゃないのこっちは。
それを声に出して言った時に、おじさんの赤ら顔の怒鳴り声をふと思い出して、境遇も状況も違っているとはいえ、こうしてお門違いの文句を垂れるようになってしまったことが悲しくなった。