2021-01-13

北東へ向かう男1

男は北東へ向かって歩き続けていた。そちらの方角の方が人も車も少ないからだ。

少し上り坂を超えたところでコンビニ看板が見えた。

道路脇には片方にだけ歩道がありその横はススキが所々生えていて風に強く流されている。

男はパーカーポケットの中で拳を作りポケットの角に押し付けるように腕をこわばらせた。

コンビニに入りまっすぐ雑誌コーナーへ向かい適当旅行雑誌を手に取り広げた。

しばらくすると右斜め前に黒いセダンが停まるのがガラス越しに見えた。運転手は小太りで角刈り、柄もののセーターを着ていた。ドアを閉めたがマフラーからは寒さのため排気ガスが白く登っている。エンジンがかけっぱなしなの確認すると男は本を棚に戻し店を出るとさっき停まった車の前を通り中に誰もいないのをフロントガラスから確認すると乗り込んでバックで方向転換し県道を北東へ走らせて行った。

男は一つのことを除いて何も考えなかった。いや、一つの目標を達成するために頭の中ではあらゆる方法を考えていた。その目標を果たせるなら手段は選ばないことはもう決めていた。

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