わたしは生活上の必要に駆られ、唾棄すべき貧民がひしめくスーパー・マーケットに足を踏み入れざるを得なかった。
ポテト・サラダ……その名の通り馬鈴薯を中心に据えた、平民趣味の凡庸なサラダがある。この「超越市場」の唯一の美点は、それを比較的うまく食わせるというところにあった。
店内を延々と流れる下品な音楽に耳を塞ぎたくなりながらも、わたしは広大かつ空虚な現代の砂漠を辛抱強く歩き、惣菜が売られる一角にたどり着いた。
「母親ならポテト・サラダくらい作ったらどうだ」の声に驚いて振り向くと、豚のように肥え太った醜い高齢の男と、これまた醜い幼児を連れたひどく陰気な女。老人はわたしの眼光に恐れをなしたのか、まさしく脱兎の如くその場を立ち去った。一方で、辛気臭い顔の女はポテト・サラダを手にして俯いたままだ。
書いてるときは楽しかったか?