2020-12-20

わたし生活上の必要に駆られ、唾棄すべき貧民がひしめくスーパーマーケットに足を踏み入れざるを得なかった。

ポテトサラダ……その名の通り馬鈴薯を中心に据えた、平民趣味凡庸サラダがある。この「超越市場」の唯一の美点は、それを比較的うまく食わせるというところにあった。

店内を延々と流れる下品音楽に耳を塞ぎたくなりながらも、わたしは広大かつ空虚現代砂漠を辛抱強く歩き、惣菜が売られる一角にたどり着いた。

母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」の声に驚いて振り向くと、豚のように肥え太った醜い高齢の男と、これまた醜い幼児を連れたひどく陰気な女。老人はわたし眼光に恐れをなしたのか、まさしく脱兎の如くその場を立ち去った。一方で、辛気臭い顔の女はポテトサラダを手にして俯いたままだ。

わたしはその貧民の手からサラダのパックを奪い取った。さらに8パックを追加し、悠々と店を出た。大丈夫ですよと念じながら。

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