深夜、日課のやけ酒をしていると酒が切れていることに気がついた。
俺はいつもこの瞬間が大好きだ。深夜特有の雰囲気と冷えた空気、それをゆったりとしたペースで身体に受けながら、暗い住宅街を抜けてコンビニまでの短い道のりを堪能する。
そんな道中の話。
道路の歩道の出っ張りのところで一人の女が座り込んでいた。その女は驚くような薄着でただただ力なく座り込んでいた。
暗くてよく見えなかったが、缶のブラックコーヒを片手にどこかを眺めていた。
俺はその女を横目に通り過ぎて目的地に向かった。
コンビニでもその女のことを考えた。
「何かあったのかも」
「ただ涼んでいるだけかもしれない」
「あんな薄着で」
酒を買いながら一通り考えて、コンビニを出る頃には腹が決まった。
「まだあそこにいるなら、今度は話しかけよう」
いないことを願っていたが、女は変わらずそこに座り込んでいた。
俺は女の前で自転車にブレーキをかけた。この自転車はオンボロ。ガタガタ言いながら、すこし女を通り過ぎて自転車は止まった。
女は身をぱちくりさせて俺の顔を見た。自分自身に緊張する隙を与えないように、すぐに話しかけた。
「大丈夫ですか?」
女はなんとなく、すこし笑みを浮かべて力なく首を横に振った。そうか、と思って俺は無言で自転車を家の方向に進めた。
その日は家に帰っても酒は飲まなかった。だけど数日ぶりによく眠れた。
ヤバイ奴っぽいのによく話しかけたな。増田優しい。
心配してくれてありがとうって、女の人思ってるよきっと。 そうだといいね。